GREEN FESTIVAL2日目。初日は相川七瀬やPUFFYなど、懐かしの名曲で青春時代をフラッシュバックして、家族連れを中心に賑わっていたGREEN STAGE。それが2日目は打って変わって、HIPHOPやレゲエにDJなどのアーティストがラインナップされ、来場者も20代を中心にストリートキッズとノリの良いセクシーなお姉さんらで溢れかえっていた。そんな2日目のGREEN STAGEは、どのステージよりも出演者が多く、アーティストがひっきりなしに登場する。
¥elloww BucksやJP THE WAVYにAwichなど、今を象徴するラッパーがラインナップされているだけでなく、AKLOや般若などのベテランから、普段こんな大きなステージに立つ機会が少ないであろう若手ラッパー、そしてt-Aceを筆頭に地元茨城出身のラッパーまで幅広くステージに上がり、GREEN STAGEを盛り上げていく。このステージのブッキングは茨城に住む音楽プロデューサーTRILL DYNASTYが担っており、それを聞けばこのラインナップにも納得だ。周りは木に囲まれ、閉鎖的なクラブとは真逆の開放的なステージでラッパーはライブを行う。
オープニングアクトが5組も登場するこのステージ。トップバッターにMASTER BRIDGEが登場すると、JOYLIIFE、Yin and Yong、DowgそしてDJ K-1と順に会場を沸かしてオーディエンスの気分を上げていく。Yin and Yongが「初めてフェスに出た!」とMCで話していたのだが、おそらくオープニングアクトに抜擢された5組のアーティストは、こんな大きな会場でのライブはほぼ初めてだったんではないだろうか。しかし、スキルフルなライブパフォーマンスと堂々とした立ち振る舞いからは、初めてのフェスとは思えない存在感を感じてしまった。
「やっぱりバンドもラッパーも、生で観るに限るな」なんて思い、オープニングアクトですっかり虜になってしまったこのGREEN STAGE。そんなオープニングアクトが終わったかと思えば、今度はJASMINEから般若まで合計7組がひっきりなしに登場する。
先述したように2日目のGREEN STAGEは出演するアーティストが1番多いが、それぞれが異なるスタイルであり、出演時間も25分程のためテンポ良く飽きずに観れる。そして13ELLが登場する。ピースで心地いいメロディでオーディエンスもリラックスしてゆらゆら揺れる。「EXP.」ではアカペラでラップを披露して、スキルもふんだんに見せつける。
既にオーディエンスで溢れかえったフロアは、AKLOのライブが始まると更にパンパンに。「DIRTY WORK」から始まるとボルテージは一気に絶頂に。みんながアガれる楽曲を連発しヒートアップするも、途中オーディエンスの疲れを感じ取り、「Too Bad Day But…」と「Looser」で熱くなった体と心をクールダウンさせてくれる。そして最後には「RGTO」で会場を再び熱くさせてステージから去っていく。
ノリノリになれる楽曲に酔いしれていると、すかさず名古屋を拠点に活動するベテランのDJ RYOWがプレイをスタートさせる。ANARCHYやKOHHなど、日本語ラップでオーディエンスの心を掴むと、往年のHIPHOPやUKドリルなどジャンルを横断したセレクトで、まさにクラブの雰囲気をそのままフェス会場に持ち込んだかのようだった。そして最後はやはりTOKONA-Xの「WHO ARE U?」を流し、潔く去っていく。
そして、そんなTOKONA-Xから大きな影響を受けて育った次世代ラッパーの¥ellow Bucksが登場する。会場には、またも大勢のオーディエンスが押しかけている。「Yessir」や「My Resort」などの代表曲を中心に披露する。ふと気がつくと徐々に日も傾き始めている。そんな少し眩しくなってきた西日とステージから照らされるカラフルな照明がマッチして、¥ellow Bucksのライブを更に彩っているように見えた。
情景込みでライブに感動をしていると、JP THE WAVYのお出ましだ。ダンサーと共に登場すると、フロアに詰めかけたオーディエンスが一斉に手を上げて応える。時刻は17時を過ぎ、徐々に疲れが見え始めてきたオーディエンスも、息を吹き返したかのうように笑顔で飛び跳ねる。「Mango Loco」や「Neo Gal Wop」など新曲からお馴染みの楽曲まで幅広く披露する。さすがJP THE WAVY。ステージ上では、ラップスキルだけでなくキレのあるダンスでも会場を沸かし、25分が一瞬のように過ぎ去っていく。
そんな大盛り上がりの会場で次に続くのはAwich。今年の3月には日本武道館でのライブを成功させた、注目の女性ラッパーだ。生い立ちを書き綴った「Queendom」で一気にオーディエンスをAwichの世界へ引き込むと、「今日は可愛い娘多いね。t-Aceさん選び放題だね」と会場を笑に包んで「どれにしようかな」へと繋げる。「Link Up」では¥ellow Bucksが登場し、再び会場のボルテージが上がる。続く「GILA GILA」では、JP THE WAVYもステージに乱入してさらにぶち上がる。
ライブに夢中になっていたが、ふと辺りを見渡すと昼間会場を照り付けていたギラギラした太陽も暮れ初め、心地のいい気温になっている。「なんて解放的な会場と音楽なんだろうか」と気分よくGREEN STAGEの大トリを待っていた。
茨城県水戸出身のt-Aceは、世代を超えて愛されるラッパーだ。水戸親善大使を務めるだけあって、地元のスターを見に会場には大勢のオーディエンスが残り、まだかと登場を待ち構えている。すると、ステージ横の巨大モニターに映像が流れ、「地元ー!」と叫びながらダンサーと共に登場!「Mr.フルパン」から披露すると、t-Aceもオーディエンスもノリノリで踊り出す。「茨城って田舎だけど、地元を盛り上げる為にどうにかしようと考えてこのフェスはできてます。地元を楽しくするのは、みんな次第なんだよね。このフェス、この地元をもっと楽しい場所にしてこーぜ!」と、気持ちのこもったMCで会場を沸かせる。
モニターに時折映し出されるMVや、ダンサーと楽曲とステージ照明のシンクロ率。更にt-AceのパフォーマンスやMCなど、全てのクオリティが際立っており、筆者は引き込まれてしまった。ライブ中には横断幕を作ってきた来場者に対して、感謝の言葉を述べるなど、手厚いファンサービスもt-Aceならでは。合計13曲も披露したt-Aceだったが、あっと言う間に時間は過ぎ去っていった。最後には「ジジイになってもババアになっても遊ぼうぜ!」そう叫び、ステージを去っていくと名残惜しそうに手を振るオーディエンスの姿が印象的だった。t-Aceが立ち去った後、サイドモニターには「来てくれたみんなありがとう。そして地元にも感謝。また音楽で一緒に遊ぼうな!!」とt-Aceからのメッセージが表示される。ライブの余韻に浸りながら、ファンへの徹底した対応に関心していると、2日目も上空に特大の花火が咲き乱れる。
初日とはガラッと雰囲気が変わったGREEN STAGE。幅広い世代のラッパーやDJがひっきりなしに登場しては、ステージを彩っていく。爪痕を残そうとアツいパフォーマンスをする若手から、圧倒的なライブクオリティで格の違いを見せるベテランまで、それぞれ差はあれど唯一共通していたことがあった。それは来年もこのフェスが開催されるのを願っていたという点だ。フェスでライブができていることに感謝を示しながらも来年も継続させる為、各アーティストが想いをオーディエンスへぶつけていた。そんなラッパーらの想いはオーディエンスと主催へと必ず伝わり、きっと来年もこのステージからHIPHOPを聴くことができるんじゃないだろうか。筆者も今から来年のこのステージを楽しみにしていたい。
(取材・文:戸谷祐貴/撮影:千田俊明・木下マリ)