茨城放送は「音楽と食とアートの祭典」をテーマに、7月15日(土)、16日(日)、17日(月・祝)の日程でLuckyFesを開催します。

INFORMATION

INFORMATION

【LuckyFes】7月24日LUCKY STAGEライブレポート

『LuckyFM Green Festival』の2日目は、朝から抜けるような青空が広がる見事な快晴に恵まれた。開演前にして気温はすでにとても高く、やはり暑さとの闘いになりそうな予感。新型コロナウイルス感染症+熱中症対策を意識しながらのスタートだ。初日同様、たくさんの観客がフェスを楽しみに会場へと詰めかける中、“今日はこのまま天気が持ってほしい……!”と強く願っていた人も多かったのではないだろうか。

ヒップホップやオルタナティブロックなどを中心に、初日以上にジャンルをクロスオーバーさせたラインナップが見ものな2日目。“LuckyFes”の文字が入ったバックドロップとFantasista Utamaroのデザインによる“Lucky曼荼羅”をフィーチャーしたLUCKY STAGEには、新進気鋭のアーティストが多数出演し、色とりどりのパフォーマンスを繰り広げた。

まずは、『TEENS ROCK 2021』グランプリ受賞でオープニングアクトを勝ち取った高知発のRIP DISHONORがステージへ。もともと昨年の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に同枠で出演予定だったが、コロナの影響で中止になってしまった経緯があり、このたび運営サイドの粋な計らいで『LuckyFes』の舞台に抜擢された。最新曲「夜行列車」をはじめ、持てる力すべてをぶつけて躍動した平均年齢16歳の4人。あまりに堂々たる演奏のため、高校生と認識していない観客も多かっただろう。「本当に幸せな時間をありがとうございました!」とやり切った彼らは、今後のギターロックシーンを掻き回す存在になるかもしれない。

RIP DISHONOR

LUCKY STAGEのトップバッターは、幅広い音楽性や突き抜けたライブパフォーマンスで新世代のバンドとして注目を集めるMonthly Mu & New Caledonia。序盤からゆったりとチルな曲調で感触を確かめつつ、猛暑による機材トラブルが起こった際も動じることなく、「今日は茨城のお客さんが多いんですかね? 僕は納豆を食べてきました」などと落ち着いて間を繋ぐところに器の大きさが窺える。クラブっぽいアプローチを経て徐々にバンドサウンドが加速する「WOKE」、ファンキーかつダンサブルな定番曲「U&F」で小気味よくオーディエンスを踊らせ、最後は「この曲をやるために来ました!」という「Jamaica」。門口夢大(Vo)が上着を脱ぎ、“夏が終わるよ”とエモーショナルに叫ぶ。そんなメッセージ性の強い壮大なロックナンバーで、日差しが眩しいステージをより熱く彩った。

Monthly Mu & New Caledonia

正午のLUCKY STAGEに登場した松永貴志は、ハービー・ハンコックをはじめ、多くの著名アーティストと共演してきたジャズピアニスト/作曲家。こうやってさまざまなジャンルを直で体感できることが嬉しく、早希(Ba/Free Aqua Butterfly)と佐藤英宜(Dr)との編成で爽快なインストが次々に届けられる中、飛び跳ねながら弾くような松永のアグレッシブな打鍵に合わせて、トリオのグルーヴが目まぐるしく変わるスリルもたまらない。歓声がOKなら「ブラボー!」と絶賛したいほど。G1サミットのテーマ曲「未来への希望」以降は中村有里(Sax)を入れ、より華々しいサウンドに手拍子が大いに湧く。たおやかなメロディのポップスからアバンギャルドなノリのジャズまでを聴かせる熱いステージで、松永が声を発したのは曲前のカウントのみ。音だけで圧倒する姿勢がとてもクールだったと思う。

松永貴志

リハが押したこともあって、同じくMC少なめで没入できたLUCKY TAPESのステージ。ブラスにコーラス隊を含む計10人の大編成で「Joy」が始まると、高橋海(Vo&Key)のやさしいボーカルを軸に、この上ないピースフルな空間が生まれていく。BPMを上げたサビのみで痛快に駆け抜けた約1分の「LOVE LOVE」を挟み、田口恵人(Ba)のファンクビートや高橋健介(Gu)のむせび泣くソロが際立つ「Get Back」、リズミカルなカッティングや歌唱で踊らせる「Gimme」など、ニューアルバム『BITTER!』の収録曲を披露。青空と心地よい風と彼らの音楽が揃えばもはや無敵で、子供連れのファミリー客もいい感じで楽しんでいる。ラストはメンバーそれぞれが歌うハッピーな「TONIGHT!」。“このムードに酔っていたい ずっと”のところでオーディエンスをジャンプさせ、歓喜のライブを締め括った。

LUCKY TAPES

水曜日のカンパネラの新章を告げた「アリス」「バッキンガム」をのっけから連発。ケンモチヒデフミのポップかつスパイシーなトラックに乗せて早口&リズミカルな歌唱を聴かせ、とびきりの笑顔とコミカルな動きも織り交ぜて一気にペースを掴んだ2代目ボーカリストの詩羽は、「あっつい!」と激しい太陽光に驚きながら、「ヒップホップのアーティストがいっぱいのイベントに出ることはめったになくて」と若い客層に嬉しそうな表情を見せる。振付を教えてオーディエンスを楽しく踊らせた「ディアブロ」では、先代・コムアイの魂も想像を超えた素晴らしさで継承しているさまにただただ感動。“発明王にオレはなる”と歌う「エジソン」、棒人形(「一寸法師」)や巨大な招き猫(「招き猫」)を駆使した演出など、この日の中毒性たっぷりのパフォーマンスで水カンにハマってしまった人も多いはず。

水曜日のカンパネラ

早くからたくさんの女性客が集まった昼下がりのLUCKY STAGEに、俳優としても知られるMORISAKI WIN(森崎ウィン)がバンドを率いて登場。グルーヴィなサウンドに乗せて、抜群の歌唱力で甘くソウルフルなボーカルを響かせる彼は、快晴の夏空と降り注ぐ日差しがよく似合う。メジャーデビュー曲「パレード – PARADE」、やさしく語りかけるようなラブソング「My Place, Your Place」などを気持ちよさそうに歌い上げ、「フェスって楽しいね、マジで!」と自身初のフェス出演を満喫しつつ、いったん後ろを向かせた観客に振り返ってもらい、「今、俺と目が合ったな。これでお前らとも縁ができた」と、主題歌を担当するテレビ朝日系『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の主人公のセリフを真似たりも。最後はそのオープニング&エンディング曲をメドレーで届け、さすがのエンターテイナーぶりを見せつけた。

MORISAKI WIN

続いては、ボカロP/マルチクリエイターのjohnによるソロプロジェクトのTOOBOE。この日WATER STAGEに出演していたyama同様、ネット発の最前線アーティストが気軽に生で観られるのも『LuckyFes』の面白さと言えよう。いつもは裸足でライブを行なう彼だが、「足の裏が死ぬほど暑い!」と珍しくサンダルで舞台へ。ファンキーなビートにしゃがれ声が映えた「爆弾」を皮切りに、三三七拍子のリズムとダンスロックの熱量を孕んだメジャーデビュー曲「心臓」などを快調に届けていく。バンド演奏にシーケンスを程よく混ぜ合わせたりと、幅広いカルチャーを横断した感じのサウンドが心地いい。「群雄割拠いろんな方が出ているフェスなので、ゆっくり身体を揺らしながら過ごしてください」と話し、後半も代表曲「春嵐」「千秋楽」で初見勢を含むオーディエンスを圧倒。そのセンスに驚かされるとともに、さらなる台頭がますます楽しみに。

TOOBOE

河原太朗のソロプロジェクトであるTENDREも、DATS/yahyelの大井一彌(Dr)やBREIMENの高木祥太(Ba)、TempalayのAAAMYYY(Cho&Syn)らを迎えたバンドスタイルで新世代らしいパフォーマンスを展開。人生を甘く軽やかに表現した冒頭の「LIFE」で早くも漂う恍惚のムードが、音楽好きから熱く支持されている彼の現状をわかりやすく物語っていた。アッパーな「PARADICE」へと続く中、楽しげな音に惹かれてLUCKY STAGEへどんどん人が集まってくる。容赦なく差し込む西日の強さに「太陽に好かれまくってる(笑)」と言いながらもその場のノリで曲のテンポを変えるなど、演奏をよりホットにするTENDREの歌いっぷり、佇まいはニクいほどにかっこいい。ほんのり80’s風味が効いたアレンジと裏打ちのリズムに胸躍る「DOCUMENT」、締めは「また必ずどこかで会えると信じてます!」と伝えて開放的でダンサブルな「RIDE」を鳴らし、極上の多幸感を生み出してみせた。

TENDRE

18時になり、ようやく過ごしやすい日陰に包まれたLUCKY STAGE。ここまで来れば、初日のように悪天候に見舞われる心配もどうやらなさそうでホッとする。そんな絶好のシチュエーションで堪能できたSPECIAL OTHERSのライブは、宮原“TOYIN”良太(Dr)、又吉“SEGUN”優也(Ba)、柳下“DAYO”武史(Gu)、芹澤“REMI”優真(Key)の音がナチュラルに混ざり合うジャムセッションを経て、ギターと鍵盤のやわらかな響きが素敵な「Happy」からスタート。聴き手のツボを押さえた耳にやさしいインストゥルメンタルが、夏の夕暮れ時をさらにロマンティックに染めていく。自然と身体が動いてしまうワクワク感、フェスの舞台にふさわしいチルアウト感、繊細なグルーヴ、安定のエモさを併せ持つあたり、さすがメジャーデビュー15周年のバンドといった印象だ。

SPECIAL OTHERS

「Anniversary」「Spark joy」と6月にリリースされたばかりのアルバム『Anniversary』からのナンバーを重ねるにつれ、奔放に踊り倒すオーディエンスが続出。中でも、約9分に及ぶ大曲「NEW WORLD」でのフレーズの応酬、終わったと見せかけてまたメロディが巡るという余白を活かしたプレイはインプロ感が冴えまくりで、いっそう痺れる盛り上がりに。「いやー、音楽って最高だよね。こういう暑いフェスはひさしぶり」「コロナ禍で家ばかりの毎日になっちゃったけど、外でやるとやっぱり楽しい!」と言葉を交わす宮原と芹澤も嬉しそう。ラストは待ってましたのキラーチューン「AIMS」。キャッチーなイントロをはじめとするスペアザならではのアンサンブルで底抜けにハッピーな空間を作り、鮮やかなフィニッシュを決めた。

そして、LUCKY STAGEのクロージングDJはYAMATOMAYAが担当。「クラブやDJにあまり馴染みのない方にも楽しんで帰ってもらえたら嬉しいです!」とマイクパフォーマンスを交えて集まった人たちをアジテートしながら、ダフト・パンク「ワン・モア・タイム」、ニルヴァーナ「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」、ボン・ジョヴィ「イッツ・マイ・ライフ」、セリーヌ・ディオン「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」など、ポピュラーな洋楽曲とバキバキに低音の効いたビートをマッシュアップさせたほか、自身の新曲「Crazy World」も織り交ぜて繋ぐというキレキレのノンストップEDMミックスで、フィナーレの打ち上げ花火を迎えるまでの約30分を彼女らしくポジティブに沸かせた。

テーマのひとつであるクロスオーバーが存分に楽しめた2日目のLUCKY STAGE。いわゆるロックに特化したフェスでは味わえないこのブッキングの妙は、ぜひ来年以降にも引き継いでもらいたい。最後の花火が無事に晴れの夜空に打ち上がり、半年という急ピッチな準備期間にもかかわらず、初回の『LuckyFes』は大成功で幕を閉じた。

(取材・文:田山雄士/撮影:オオハザマノリト)

APP DOWNLOAD

チケットをお持ちの方は公式アプリ(無料)をダウンロードして
本人確認登録をお願いいたします。